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教養の物理~期末テストを終えて

全体的な出来具合としては平均点が70点を超えているので、
かなり良い出来だと思います。

部分的に多少コメントすると、

・必修問題は満点に近い点数の人が多かったです。
この部分で点数を失点してしまうとキツイと思います。
基本的な定義や計算問題なのでしっかり復習をしておくべきでしょう。

・熱力学については授業で扱った問題を数値や設定を少しだけ変えて出題しました。

問題7は有効数字の指定をしたら出来ている人と、そうでない人に分かれていました。
数値を扱う場合は「単位」と「有効数字」を丁寧に扱うことは重要な事です。

問題8は変化させる順序を少し変えて出題しました。
理想気体のモデルの問題なので基本的には状態方程式と
ボイルーシャルルの法則が使えるかどうかの問題です。
(4)はおまけみたいな問題です。講義では最後の時に少し触れた程度なので
配点は1点と低く設定しています。

問題9は講義内で扱った場合は外力を$F$の設定で解説したと思います。
テストでは外力$F$の代わりに外圧$p$と断面積$S$が与えられているという設定です。
なので、圧力$p=\frac{F}{S}$の定義から、$p$を$F$に変換し、
外からの力を$F=pS$として考えていけばよいことになります。

多分、問題9が一番楽で早く解けるのではないかと思っていましたが、
採点をしてみると皆さんはそうは感じていなかった様です。

・力学についてはぼほ去年の問題と同じ問題で出題しました。
選択の傾向としては問題10,12,13に分かれていました。

問題10は運動方程式からエネルギー保存則を導く問題です。
講義内でも扱っていますし、問題1の式変形で途中までやっているので
難易度は高くないはずです。
本来であれば運動方程式を積分するか、
或いは両辺に$v=\frac{dx}{dt}$をかけて式変形をすることにより
力学的エネルギー$\frac{1}{2}mv^2 + mgx$が時間に依存しない量
になる事を示すものです。
ですが、運動方程式から$v$や$x$をを計算し、
運動エネルギー$\frac{1}{2}mv^2$と位置エネルギー$mgx$を直接計算し
その合計が時間に依らず一定な値になる事を示した人が多くいました。
本来の主旨とはずれていますが、間違いでは無いので点数を与えています。
丸が付いていなくて点数だけ書かれている場合は
「丸にはできないが点数はあげます」と言う意味です。

問題11は雨滴のモデルです。
運動方程式を立てた後、その微分方程式を解くのは少し手間がかかります。
なので、解いた結果が与えられた状態でその式が物理的に
どのようなことを表しているかを考える問題です。
十分に時間が経つと、つまり$v(t)$の式で$t \to \infty$とすると$\frac{mg}{k}$に近づきます。
原点での傾きは$v(t)$を$t$で微分した式に$t=0$を代入すれば求まります。

問題12は鉛直投げ上げのモデルです。
それぞれの計算はそれなりにできていましたが
(7)(8)の正答率はあまり良くなかったです。
(2)(3)で求めて$v(t)$や$x(t)$を使って、$\frac{1}{2}mv^2$や$mgx$を計算する問題です。
作図も苦手な人が多い様です。これは、この問題に限った事ではないと思います。
「作図が出来ないのは何故なんでしょうか? 」
おそらく、計算して出てきた物理量が関数として見れない事が原因だと思います。
どの部分が変数で、どの部分が定数や比例係数になっているのかを
考えると図が描けるようになると思います。

問題13は摩擦がある斜面を滑り降りる問題です。
(1)の作図が出来ないのは少し困りものです。
きちんと丁寧に作図ができるようになりましょう。
特に、重力の矢印が真下に来ていない答案がいくつか見受けられました。
よく考えてみて下さい。「あなたにかかっている重力は斜めに作用してますか?」
そんなことは無いはずですよね。
作図においてはもっともらしく、
即ち物理的におかしくないように書くことが求められます。
(4)は追加で出題した問題ですが、符号の間違いがかなり多かったです。
講義内で仕事の話をしたときに負の仕事として摩擦力による仕事を扱ったと思います。

・電磁気学についても過去問とほぼ同じ問題で、問題14の$Q(0)$の設定だけ変えて出題しました。

問題14は初期状態の充電量がが$CV$を超えているので放電現象になります。
講義で解説した様に、回路方程式を立て
それぞれの条件を当てはめて考えることになります。
(4)の作図は$t=0$で$\frac{3}{2}CV$の値を取り、
$t \to \infty$において$CV$に漸近することになります。
解答用紙ではマス目が印刷されているので
それを利用して正しい比率で作図をしましょう。

問題15は線電荷による電場を求める問題です。
クーロンの法則を使って求める方法と、
ガウスの法則を使って求める方法の両方のアプローチで考える問題です。
クーロンの法則を利用する場合は微小部分を点電荷とみなして計算し、
全区間に対して積分する手法です。
ガウスの法則を利用する場合は想定する閉曲面に
円筒をイメージしガウスの法則を適用します。
問題では小問に分割し、問題の流れにのって解答していくことになります。

問題16は球に分布した電荷による電場を求める問題です。
モデルAは球全体に体積密度$\rho$で分布していて、
モデルBでは球の表面のみに面密度$\sigma$で分布しています。
いずれの場合でもガウスの法則を適用する閉曲面は半径$r$の球になります。
電荷の分布した球の半径$R$の内外に対してガウスの法則を適用し、電場を求めます。
この問題でも(3)の作図の正解率が悪いです。
(1)(2)で電場を求める計算が合っているにも関わらず、
作図が間違っている人が多数見受けられました。
作図の注意点については補充授業でも解説する予定です。

チャレンジ問題については、アンケートでのコメントにも
「チャレンジ問題がチャレンジ過ぎだ」とありました。
確かに、難易度はあるとは思いますが、
講義の内容から外れる程の難易度ではありません。
力学の問題なので、スタート地点は運動方程式を立てることになります。
運動方程式は$ma=F$ですが、ここでの問題は$m$が時間的に変化する事です。
なので単純に運動方程式を書けば良いわけではありません。
鎖に作用する力は2種類あります。鎖を引き上げる力$F(t)$と重力$m(t)g$です。
$F$も$m$も時間的に変化するので$(t)$と表記しておきます。
従って、運動方程式の右辺は$F(t)-m(t)g$と書けます。
さらに、鎖の密度は$\rho$で一定なので密度$\rho$と長さ$x(t)$を書ければ
その時点での質量になります。
よって、運動方程式の右辺は$F(t)-\rho x(t)g$となります。
一方、左辺の$ma$の部分は質量が時間的に変化するので
単純に$ma$と書くことができません。
そこで、質量が変化しても対応ができる形、$\frac{d}{dt}(mv)$を利用することになります。
この形は講義でも少し紹介しましたが、
ニュートンが最初に運動方程式を提唱した形です。
これを利用すると運動方程式は

\begin{eqnarray*}
\frac{d}{dt}\Bigl( \rho x(t) v(t) \Bigr) & = & F(t)-\rho x(t)g
\end{eqnarray*}

と書くことができます。
ここまで出来ていれば10点の配点になります。
この後は左辺の微分を行い、問題文の設定で使われている文字に書き直し、
$F=\ \ $の形に書けば(2)の答えになり、
(2)で$v$が一定を適用すれば$a=0$として書き直せばOKです。

以上、期末テストについてのコメントでした。

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